クラッシック(パリ〜ツール、ジロ・デ・ロンバルディア)ネタバレ有

自転車ロードレースのクラッシック。古くは100年以上前から、ほぼ毎年、ほぼ同じコースで争われるワンデイ(一日で終わる)レース。一日だけといっても200km以上のコースが多く非常に過酷で、それだけにステイタスも高い。毎年ほぼ同じコースをその時々の最も強い選手たちが争うのだが、巧みな戦術で勝つ場合もあれば、圧倒的な力の差で勝つ場合もある。何年か前には誰かがこの場所で逃げたとか、このレースはこの坂で必ず勝負が決まるとか、コースが紋切り型であるが故にわかりやすく、かえって選手の個性が際立って見えることがある。そこがクラッシックの楽しさだ。少し古い歌をいろいろな人が安易にコピーして陳腐化することもあるが、本当にいいものを、すばらしい技量で演奏したものは感動する。それに近い。
今シーズン終盤の二つのクラッシックは素晴らしかった。
パリ〜ツールでは終盤、ジルベールが四人の逃げグループに合流。大事なレースの大詰め、ジルベールがレースをかき回すことは珍しくない。よくある風景だ。で、たいがいゴール間際集団につかまり、結果が残らない。またいつものパターンか、みんなそう思ったと思う。が、今回はジルベールをチームメイト一人選手が献身的にアシストする。自分の勝利など考えずジルベールのために駆け引きすることなく燃え尽きるくらい先頭をひいて追いかける大集団から逃げ、それに答えるようにジルベールが僅差で勝った。手に汗握るレースで感動した。
そして今シーズン最後のクラッシック、ジロ・デ・ロンバルディア。バッランが世界チャンピオンの証であるアルカンシェル(虹色ジャージ)を着て走っていた。同じチームには既にロンバルディアで2勝しているクネゴがいる。クネゴは本当は自分がアルカンシェルを着たかったと思う。でも結果はチームメイトのバッランが獲った。もちろんチームメイトなのでうれしかったろうけれど、クネゴ自身もそのレース2位で自分も優勝を狙えただけに気持ちは複雑だったことだろう。で、二人で臨んだレース、世界チャンピオンバッランはクネゴのためにアシストする。今までクネゴの出るレースで、チーム・ランプレのアシスト陣の動きが終盤乱れることが多かった。もう少しアシストが残っていれば・・・というレースが多かったのだ。でも今回はチーム・ランプレはすごくまとまっていた。ディフェンディング・チャンピオンであるクネゴを勝たせるためにレースをコントロールしていた。それに答えるように最後から二つ目の峠の麓でクネゴは集団から解き放たれ、そのまま二つの峠、二つの下りをたった一人で逃げ切った。いや〜〜〜、もうファン冥利に尽きる。大感動。一つ目の下りで後ろからの集団を一度待って体力を温存し、最後の峠でもう一度アタックするかと思っていたが、待たずに逃げ切る姿、めちゃくちゃかっこよかった。観てて泣きそうになった。実はこのレース、クネゴのライバルたちがほとんど出ていなかった。ベッティーニは引退。リッコはドーピングで出場停止中。レベリンは所属チームが出場辞退して出られない。シュレックもいない。バルベルデもいない。いわゆるスター級の選手がいないのでクネゴとしては勝ちやすかったのは事実だろう。でもそれだけに力の差を見せつけた今回の勝ち方は価値がある。これでクネゴロンバルディア3勝目。できればあと2勝してコッピの記録に並んで欲しい。そうなると本当に歴史に残るチャンピオンの一人だ。